そしてその前年、木村荘太が自らの家庭を破壊して京都岡崎の和辻の宿へ走つた時にも、金さへあれば一緒に行きたかつたくらゐであつたが、それが今度松内氏の好意でその憧れの土地を蹈むことになつたのだから、私の喜びは大したものだつた。
それやこれやを考へると、矢張あの当時から将来関西に定住する下地があつたのに違ひない。
たゞあの時分は「己は江戸ツ児だ」と云ふ向う意気が邪魔をして、ほんたうに此の土地の人情風俗を理解するまでに至らなかつた、そこが今日の心境とは大分違つてゐるのである。
そしてその前年、木村荘太が自らの家庭を破壊して京都岡崎の和辻の宿へ走つた時にも、金さへあれば一緒に行きたかつたくらゐであつたが、それが今度松内氏の好意でその憧れの土地を蹈むことになつたのだから、私の喜びは大したものだつた。
それやこれやを考へると、矢張あの当時から将来関西に定住する下地があつたのに違ひない。
たゞあの時分は「己は江戸ツ児だ」と云ふ向う意気が邪魔をして、ほんたうに此の土地の人情風俗を理解するまでに至らなかつた、そこが今日の心境とは大分違つてゐるのである。