尤も幹彦君の方が一日の長がある訳で、此方へ来てから知り合ひになつた三条萬屋の若主人の金子さん、その他二三の人々を案内役に誘ひ出して、最初に花見小路の「菊水」へ行つて晩飯を食つた。
今ではあの菊水の近所に茶屋や置屋が一杯に建て込んでしまつたけれども、当時は閑静な原つぱのやうな所にあの鳥屋が一軒だけ、ぽつんと建つてゐたやうに覚えてゐる。
聞く所に依ればもとあの辺は建仁寺の地内であつたのを、祇園の女紅場が寺から借りるか買ふかして、ぽつ/\色里を彼処へ移すやうにしたので、初めは狐や狸などが出たものだと云ふ。