そんなことを断片的に聞いてゐたので、会ふ前から好奇心を感じて、新聞に連載してゐた「日記」の中にも此の人のことを書いたのであつたが、そのお多佳さんの家へ始めて連れて行つてくれたのは、岡本さん兄弟であつた。
大友は、今は立派な普請が出来て旧態を改めてしまつたが、当時は時代のついた恐しく古い建物で、天井の低い薄暗い家の中へ這入ると、てら/\黒光りに光つてゐる柱が危なつかしく一方へ傾いてゐた。
それにしてもあの家中にほんのりと籠つてゐたなまめかしい伽羅の薫りを私は今も忘れない。
そんなことを断片的に聞いてゐたので、会ふ前から好奇心を感じて、新聞に連載してゐた「日記」の中にも此の人のことを書いたのであつたが、そのお多佳さんの家へ始めて連れて行つてくれたのは、岡本さん兄弟であつた。
大友は、今は立派な普請が出来て旧態を改めてしまつたが、当時は時代のついた恐しく古い建物で、天井の低い薄暗い家の中へ這入ると、てら/\黒光りに光つてゐる柱が危なつかしく一方へ傾いてゐた。
それにしてもあの家中にほんのりと籠つてゐたなまめかしい伽羅の薫りを私は今も忘れない。