大友は、今は立派な普請が出来て旧態を改めてしまつたが、当時は時代のついた恐しく古い建物で、天井の低い薄暗い家の中へ這入ると、てら/\黒光りに光つてゐる柱が危なつかしく一方へ傾いてゐた。
それにしてもあの家中にほんのりと籠つてゐたなまめかしい伽羅の薫りを私は今も忘れない。
私は伽羅の香と云ふものをまだ嗅いだことはなかつたが、あの家の玄関を上ると、暗い廊下からたゞよつて来るその不思議な匂を直ぐに感じた。
大友は、今は立派な普請が出来て旧態を改めてしまつたが、当時は時代のついた恐しく古い建物で、天井の低い薄暗い家の中へ這入ると、てら/\黒光りに光つてゐる柱が危なつかしく一方へ傾いてゐた。
それにしてもあの家中にほんのりと籠つてゐたなまめかしい伽羅の薫りを私は今も忘れない。
私は伽羅の香と云ふものをまだ嗅いだことはなかつたが、あの家の玄関を上ると、暗い廊下からたゞよつて来るその不思議な匂を直ぐに感じた。