彼女は私の顔を見ると、「谷崎さん、老妓はひどいぢやありませんか」といきなり云つた。
それは私が新聞へ載せた記事の中に人の話をそのまゝ書いて、「四十近い老妓」と記したからであつたが、会つてみると、いかさま老妓と云ふ歳ではない。
小柄な、肉附きのいゝ、利口さうな眼をした色の黒い人で、お白粉気のない地味な作りをしてゐたから、実際より老けて見えたかも知れないが、三十を少し越えたくらゐの年増と思へた。
彼女は私の顔を見ると、「谷崎さん、老妓はひどいぢやありませんか」といきなり云つた。
それは私が新聞へ載せた記事の中に人の話をそのまゝ書いて、「四十近い老妓」と記したからであつたが、会つてみると、いかさま老妓と云ふ歳ではない。
小柄な、肉附きのいゝ、利口さうな眼をした色の黒い人で、お白粉気のない地味な作りをしてゐたから、実際より老けて見えたかも知れないが、三十を少し越えたくらゐの年増と思へた。