さう云へば女将の姪に当るといふ年頃の娘さんがゐたつけが、今ではもういゝ奥さんになつてゐるであらう)「何んでも前の日から降り続けて居た天気が上りかゝつて、をり/\雲の隙から洩れる薄日が、糠のやうな雨の脚を光らせて居る午過ぎであつた。
年の若い、独逸語ぐらゐ心得て居さうな平等院の坊さんが、大きな鉄の鍵を持つて、鳳凰堂の裏口の木柵の錠を、がしん、がしん、と揺す振りながら開けてくれた。
露に濡れた雑草のだら/\路を下りて、尾楼の附け根の階を上ると、方五間の縁側の石甃が、瓦葺の傾斜の優しい庇の蔭を平かに走つて居る。