何よりも顔の血色が生き/\としてゐて、働き盛りの実業家に見るやうな、栄養の豊かな色つやをしてをられ、その体つきも中肉中背で、どちらかと云へば肥満してをられた。
それに、思ふに東京育ちの先生は都会人の嗜みを重んじて、学者風や文人風に見えることを嫌はれたのであらう。
蓋しさう云ふ点は私と一脈相通ずる所があるのだが、私の下町趣味なるものは実は甚だ喰はせ物なので、私は表面若旦那然たるなりをしてゐても一と皮剥げば衒気満腹、蛮骨稜々、鼻持のならない野心や情慾が悪臭紛々と漲つてゐる不良青年であつたから、先生のやうな温雅な尊者の前へ出ると、何だか尻の辺がムヅムヅして来るのであつた。