察するところ先生も亦当時の文壇の風潮に慊らず、自然主義に反抗して起つたわれ/\を大いに激励して下さるつもりだつたのであらう。
それに、最初の訪問の日にわれ/\が徒らに尻込みをしてゐて一向胸襟を開かないのを歯痒く感ぜられ、くつろいで酒でも飲みながらゆつくり話し合つてみたらと、さう思はれたのでもあらう。
尚、一層皮肉な観察をすれば、先生は東京生れの二青年作家に、その同じ都会育ちの文人の大先輩として、単に藝術上の見識のみならず、衣裳持ち物言語動作の嗜みから礼儀作法の末に至るまで、自ら範を示してやらう、「都雅な文人と云ふ者はかうすべきものだ」と云ふところを見せてやらう、と云ふやうな衒気を持つてをられたかも知れない。