先生の方ではそれをキツカケに長くわれ/\を庇護して下さるつもりだつたのであらうが、その後私は谷中の斎場で挙げられた先生の告別式に参列した以外、つひぞ一遍も生前にお訪ねしたことがなかつた。
瓢亭の会合の後二箇月近くも京阪をうろついてゐたのだから、せめてその間に二度や三度はお伺ひするのが礼儀であつたが、毎日々々お茶屋通ひの方が忙しく、とんとそんなことを顧みる暇もなかつた。
これは幹彦君も同様であつて、若い二人は先生の前で窮屈な思ひをするよりも祇園先斗町の藝者を相手に駄々羅遊びをし、分不相応な負債の山を作るのに熱心であつた。