何と云つても切磋琢磨は若い同士の間のことだ。
上田先生との交際は上述の如く不首尾に終つたが、その頃大阪で新聞記者をしてゐた岩野泡鳴君は、根が先生とは全く反対の野人であり、先生に対するやうな畏敬の念は起らなかつたが、一見無邪気で稚気愛すべきところがあつたので、私は此の人とは比較的障壁を設けずに話すことが出来た。
尤も一と晩か二た晩一緒に遊んだゞけであつて、深く附き合ひはしなかつたが、書いた物から聴かぬ気の論客らしく想像してゐたのに、会つてみると天真爛漫な人物で、議論をしながら時々小児の如く顔を赧くするのが意外であつた。