が、あの時分のは、あの「巌頭の感」の文章が示してゐるやうに、何処か甘つたるい、センチメンタルなものであつて、恐らくシヨオペンハウエルや仏教哲学などの影響を受けてゐたのであらうが、われ/\の時代の神経衰弱は、もつと世紀末的な、廃頽的なものであつた。
かのマツクス・ノルドオがその著「デゼネレエシヨン」の中で論じてゐるやうな病的な近代思潮が、われ/\の頭を支配してゐたので、われ/\の煩悶や懊悩の中には、センチメンタリズムの分子は微塵もなかつた。
われ/\はそんなものを自然主義前期の遺物として軽蔑した。