彼はもうずうつと以前から「死の恐怖」を口にしてゐた。
小山内君の「病友」や「色の褪めた女」を読んで、気味悪がつたのも彼であつた。
或る年の冬、私と二人で乙女峠を越えようとして雪の積つた峠の頂きへ辿り着いた時、理由のない恐怖が漠然と襲つて来て、異口同音に「恐い」と云ひ出して、二人共真つ青になりながら夢中で坂を馳せ下つたことなぞもあつた。
彼はもうずうつと以前から「死の恐怖」を口にしてゐた。
小山内君の「病友」や「色の褪めた女」を読んで、気味悪がつたのも彼であつた。
或る年の冬、私と二人で乙女峠を越えようとして雪の積つた峠の頂きへ辿り着いた時、理由のない恐怖が漠然と襲つて来て、異口同音に「恐い」と云ひ出して、二人共真つ青になりながら夢中で坂を馳せ下つたことなぞもあつた。