彼も私も、一人でゐる時より二人でゐる時の方が余計恐怖の発作を感じた。
私の“The Affair of Two Watches”を読んだ方は御承知であらうが、あの中に、杉と云ふ男が金策に窮して一計を案出する所がある。
その方法は、当時丸善が「ヒストリアンス・ヒストリー」の予約出版をしてゐて、最初に五円払ひ込めば、時価百円以上の書籍を全部送り届けてくれる、あとは月賦で一年間か二年間かに成し崩しに払へばいゝのである、それで、先づ五円の申し込み金を出して全巻を受け取り、それをそつと質に入れるか、情を明かして誰かに買つて貰ふかする、さうすれば差し当り百円ぐらゐの金は出来る、丸善の方へは月賦さへキチンと払つて行けば分る筈はない、―――小説の中で、杉がこんなことをしやべるのであるが、私の友人で、それを読んでこつそり実行した男があつた。