「此の石段を上り切る迄に己は倒れる」と云ふ予感がして、早く上つてしまひたいと思つても、息切れと股擦れで重い足を引きずつてゐるところへ、光線の威嚇に脅やかされた眼が錯覚を起して、水平な段々の一方の端が低く見えたり、ゆるやかな石のだら/\路が壁のやうに切つ立つて迫つて来たりした。
奈良を一日歩いた時にも、あの春日野の芝生の緑があまりキラキラ反射するので軽い眩暈を覚えながら、どうも変だぞ眼に快い筈の芝生の色を正視することが出来ないなんて、これは病気が再発するんぢやないのかなと、ぼんやりそんな風に感じた。
それに、関西は東京に比べると土の色が白いものだから、光線の照り返しが非常にチカチカするのである。