四月の末に上方へ来た私は、最初はさうも思はなかつたが、若葉の時候に奈良なんぞを歩いてみると、上野公園などゝは違つて、木の色でも地面の色でも、とても色彩が毒々しく、まるで塗りたてのペンキのやうにギラギラしてゐる。
私は幹彦君と二人で、三条通りを真つ直ぐに春日神社へお詣りをし、博物館を見物して三笠山の下を通つて、手向山八幡、三月堂、二月堂、大仏殿と、だゞつ広い公園の彼方此方を見て廻つたが、眼に入るものは白い土か、白い壁か、それでなければ芝生や樹木の青い色である。
何処へ行つてもクツキリとした、パツと燃え立つやうに明るい「白」と「緑」の連続、………「新緑滴るばかり」と云ふと涼しさうだが、その新緑がぬら/\と汗で光つてゐるやうに見え、白い地面はカサカサに乾いてゐて、歩く度毎に灰のやうな細かい埃を上げる。