(雑魚寝で一番悩まされたのは、大阪の宿にゐた時分、中井浩水君が新町の茨木屋に十日も二十日も流連してゐて、夜になると呼び出しの電話がかゝつて来る、出かけて行くと浩水君は座に相方の美妓を侍らせ、いつも必ず御贔屓の幇間を一人従へてゐる、さて夜が更けるまで酒が弾んで、帰らうとすると、是非泊つて行けと云ふ、で、泊るのはいゝんだが、浩水君は相方と一緒に別の座敷へシケ込んでしまつて、私は外の女どもとあぢきなく雑魚寝をさせられる。
ところが、浩水君の相方の美妓の顔がいつ迄もいつ迄も眼先にチラついて、容易に眠られないのである。
あれは故越路太夫の養女の小しづと云ふ妓であつたさうだが、美人と云ふよりは実に阿娜な女であつた。