が、そんなになりながら京都にぐづ/\してゐたと云ふのは、旅費がなかつたからばかりではない、汽車に乗るのが又恐くなつてゐたのである。
私は或る時岡本さん兄弟や幹彦君と汽車で嵯峨へ行く途中、始めてあの病気の再発を自覚した。
そして、その汽車には便所の設備がなかつたのを幸ひに、腹が痛み出したとか下痢を催したとか云つて発車の間際に下りようとすると、岡本さんが新聞紙か何かをひろげてくれたので、下りることもならずマゴマゴするうちに発車してしまつたが、でもその時は恐怖感が激しくなかつたので辛うじて胡麻化すことが出来た。