さあ、それが、帰りたいのは山々なんだが、汽車に乗れない訳があるんで、………と、さう云つたつて親父に分る筈がないから、何とか彼とか出鱈目な返事をやつては、一日延ばしに延ばしてゐる。
さうしてゐるうちには、フイと汽車に乗れるやうになるかも知れないと、それを頼みにしてゐるのだが、その実さう云ふ望みはだん/\薄くなるばかりであつた。
これが自分の自由意志で汽車に乗る場合、乗つても乗らないでもどうでもいゝと云ふ場合だと、まだ幾分か気が楽なんだが、強ひられて乗る、国民の義務を果すために否でも応でも汽車に乗つて帰らねばならぬ、と云ふのであるから、避け得られない運命が待ち構へてゐるやうな気がして、ます/\臆病になるのである。