さうしてゐるうちには、フイと汽車に乗れるやうになるかも知れないと、それを頼みにしてゐるのだが、その実さう云ふ望みはだん/\薄くなるばかりであつた。
これが自分の自由意志で汽車に乗る場合、乗つても乗らないでもどうでもいゝと云ふ場合だと、まだ幾分か気が楽なんだが、強ひられて乗る、国民の義務を果すために否でも応でも汽車に乗つて帰らねばならぬ、と云ふのであるから、避け得られない運命が待ち構へてゐるやうな気がして、ます/\臆病になるのである。
あゝ、今年は何と云ふ厄年か、東京で病気が再発したのならどうにか凌いで行けるだらうに、選りに選つて旅先でこんなことになり、而も徴兵検査のために発作の危険を冒さなければならないとは。