私は又窮余の一策として何処か京阪の附近で検査を受けようと云ふ案を思ひ付き、大阪の或る会社に勤めてゐる友人を煩はして方々へ問ひ合はせて貰つて、兵庫県の今津へ寄留することに話を決めて貰つたりしたが、これも最後の受け附けの日に僅かな時間の遅刻で手続きが取れなかつた。
たしか、書類は疾うに東京から着いてゐたので、毎日今津へ行かうとしては京阪電車の停車場までは出かけるけれども、電車を見ると勇気が沮喪してスゴスゴ戻つて来る。
そんなことを繰り返して今日行かなければもう間に合はぬと云ふ最後の日に、改札口の前を往つたり来たりしながら何台も/\出て行く電車を恨めしさうに眺めてゐると、そこへ萬屋の金子さんがやつて来て「どちらへお出かけです」と云ふので、「大阪まで」と云つてしまふと、「では御一緒に」と云はれて、断り切れずに乗つたのであつた。