そんなことを繰り返して今日行かなければもう間に合はぬと云ふ最後の日に、改札口の前を往つたり来たりしながら何台も/\出て行く電車を恨めしさうに眺めてゐると、そこへ萬屋の金子さんがやつて来て「どちらへお出かけです」と云ふので、「大阪まで」と云つてしまふと、「では御一緒に」と云はれて、断り切れずに乗つたのであつた。
(私は嘗て東日へ載せた「恐怖」と云ふ短篇に、此の苦悩を詳細に書いてゐる。
酔ふといくらか神経が麻痺するので、私は片手にポツケツト入りのウイスキーの壜を提げ、真つ青な顔をして吊り革にぶら下りながら、金子さんが呆れてゐる前でそれをグイグイ喇叭飲みにした。