(私は嘗て東日へ載せた「恐怖」と云ふ短篇に、此の苦悩を詳細に書いてゐる。
酔ふといくらか神経が麻痺するので、私は片手にポツケツト入りのウイスキーの壜を提げ、真つ青な顔をして吊り革にぶら下りながら、金子さんが呆れてゐる前でそれをグイグイ喇叭飲みにした。
晴れた、暑い日で、京阪沿道の北河内の平野が炎天の下に白く埃ツぽく濛々と煙つて、壁や、水溜りや、いろ/\の物が遠くの方で銀砂のやうにピカピカ光つた)しかし金子さんのお蔭でどうやら自信を得た私は、大阪へ着くと直ぐ阪神で今津の役場へ駈けつけたが、もう時間外で間に合はなかつたのであつた。