とてもあの暑さうなテント張りの下へ這入る勇気がないので、日覆ひのない町ばかりを選びながら歩いたが、四つ辻へ来て見渡すと、どの町通りもどの町通りも並行線の悉くが日覆ひで埋まつてゐる時など、足の入れ場もない気がした。
それに、運悪くも私は、ほんのちよつとした災難に出遭つて、神経衰弱を募らせるやうなハメになつた。
と云ふのは、或る日どう云ふつもりであつたか住吉神社へお詣りに出かけたのであるが、その時分南海電車は出来てゐたけれども、往き復りとも俥に乗つて行つたその帰り路、たしか萩の茶屋辺まで来た時に、俥の上で何の気もなく少しうしろへ仰け反ると、そのまゝ車台が梶棒を天に冲して仰向けに打つ倒れ、私は往来へ叩きつけられてイヤと云ふほど後頭部を打つた。