と云ふのは、或る日どう云ふつもりであつたか住吉神社へお詣りに出かけたのであるが、その時分南海電車は出来てゐたけれども、往き復りとも俥に乗つて行つたその帰り路、たしか萩の茶屋辺まで来た時に、俥の上で何の気もなく少しうしろへ仰け反ると、そのまゝ車台が梶棒を天に冲して仰向けに打つ倒れ、私は往来へ叩きつけられてイヤと云ふほど後頭部を打つた。
いつたい関西の人力車は関東のよりも幅が狭く、きやしやに造つてあるので、横に引つくり覆る率は多いやうだが、反つたぐらゐで忽ちうしろへ倒れるなんて、あまりにも車夫が迂濶である。
それにしても当時の私がいかに相撲取りの如く肥満してゐたか、此の一事でも明かで、車夫は梶棒を握つたまゝ宙へ吊し上げられて両足をぶらん/\させてゐた。