私の前にまだ二三人残つてゐた患者が、一人減り二人減りして最後の一人になつた時、私はます/\強く打ち出した心臓の鼓動を抑へて、蒼惶として階段を駈け下り、夢中で戸外へ逃げてしまつた。
私は又、暑い日盛りに南北線の電車通りを南へ向つて歩いて行つた或る日のことを想ひ出す。
何の用事でそんな時刻にあんな所を歩いたのか分らないが、その時分新町橋の附近に店を出してゐた山内吾八君の許へでも出かけたのであらうか。
私の前にまだ二三人残つてゐた患者が、一人減り二人減りして最後の一人になつた時、私はます/\強く打ち出した心臓の鼓動を抑へて、蒼惶として階段を駈け下り、夢中で戸外へ逃げてしまつた。
私は又、暑い日盛りに南北線の電車通りを南へ向つて歩いて行つた或る日のことを想ひ出す。
何の用事でそんな時刻にあんな所を歩いたのか分らないが、その時分新町橋の附近に店を出してゐた山内吾八君の許へでも出かけたのであらうか。