何の用事でそんな時刻にあんな所を歩いたのか分らないが、その時分新町橋の附近に店を出してゐた山内吾八君の許へでも出かけたのであらうか。
たゞ覚えてゐることは、もはや嚢中には二三円の金しかなかつた、そして徴兵検査の期日は旬日の後に迫つてゐた。
生命の危険、金の工面、徴兵忌避の刑罰の心配、私はそれやこれやのために暗澹たる胸を抱いて遥かに東京の空を慕ひながら、前途に何の希望もなく、明日はどうなると云ふ見込みもなしに、重い足を引き擦り/\炎天の路をテクテク歩いた。
何の用事でそんな時刻にあんな所を歩いたのか分らないが、その時分新町橋の附近に店を出してゐた山内吾八君の許へでも出かけたのであらうか。
たゞ覚えてゐることは、もはや嚢中には二三円の金しかなかつた、そして徴兵検査の期日は旬日の後に迫つてゐた。
生命の危険、金の工面、徴兵忌避の刑罰の心配、私はそれやこれやのために暗澹たる胸を抱いて遥かに東京の空を慕ひながら、前途に何の希望もなく、明日はどうなると云ふ見込みもなしに、重い足を引き擦り/\炎天の路をテクテク歩いた。