何でも小野君の高等学校時代の友人のお父さんであつたが、なあに、案じる程のことはないよ、動悸が強く打ち出したら此の薬をお飲みなさい、さうすれば直ぐに静まる、大丈夫、きつと大丈夫だから、安心して何処へでもいらつしやい、と、物馴れた調子で巧い工合になだめてくれた。
で、私は此のお医者さんから貰つた散薬の鎮静剤と、脳鼻液と云ふ鼻の薬と、健脳丸と、ウイスキーの罎と、ハンケチに包んだ氷嚢と、これだけを携帯して小野君に附き添はれながら汽車に乗り込んだものである。
(私は当時いろ/\の薬を入れた信玄袋を肌身離さず持つてゐた。