過激思想から露西亜の宣伝防止問題、普通選挙、デモクラシーと哲人政治、果ては文部省の仮名遣い案、ローマ字問題まで持ち出して見たが、結局不得要領の「う、………あゝ」で受け流されてしまい、記者は御苦労にも一人相撲を取ったのであった。
記者が応接間を辞したのはそれから数分後であったが、何だか餘り業腹でもあり、まだ此れだけでは記事の材料が足りないような気がしたので、表門を出ると小さな塀の外側を廻りながら、もう一度よく此の邸の建て方や、構えの内外を観察した。
家は灰色の壁を塗った、わりに新しい洋館で、成る程四人で住むのにはちょうど手頃な、平家建ての造りである。