塚本の口上では、連れ添う女房を追い出して余所の女を引きずり込むような不実な男に、何の未練もないと云いたいところだけれども、やっぱり今も庄造のことが忘れられない、恨んでやろう、憎んでやろうと努めながら、どうしてもそんな気になれない、ついては思い出の種になるような記念の品が欲しいのだが、それにはリリーちゃんを此方へ寄越して貰えまいか、一緒に暮していた時分には、あんまり可愛がられているのが忌ま忌ましくて、蔭でいじめたりしたけれども、今になっては、あの家の中にあった物が皆なつかしく、分けてもリリーちゃんが一番なつかしい、せめて自分は、リリーちゃんを庄造の子供だと思って精一杯可愛がってやりたい、そうしたら辛い悲しい気持がいくらか慰められるであろう。
「なあ、石井君、猫一匹ぐらい何だんね、そない云われたら可哀そうやおまへんか。
と、そう云うのだったが、