あんまりムキになったせいか、急に涙が込み上げて来たのが、自分にも不意討ちだったらしく、福子は慌てて亭主の方へ背中を向けた。
雪子の名を使った品子のあの手紙が届いた朝、最初に彼女が感じたのは、こんないたずらをして私達の間へ水を挿そうとするなんて、何と云う嫌な人だろう、誰がその手に乗ってやるもんか、と云うことだった。
品子の腹は、こう云う風に書いてやったら、結局福子はリリーのいることが心配になって、此方へ寄越すかも知れない、そうなったら、それ見たことか、人を笑ったお前さんも猫に焼餅を焼くじゃないか、やっぱりお前さんだってそう御亭主に大事にされてもいないのだねえと、手を叩いて嘲ってやろう、そこまで巧く行かないとしても、この手紙をキッカケに家庭に風波が起るとしたら、それだけでも面白いと、そう思っているに違いないので、その鼻を明かしてやるのには、いよいよ夫婦が仲好く暮すようにして、こんな手紙などてんで問題にならなかったと云う所を見せてやり、二人が同じようにリリーを可愛がって、とても手放す気がないことをもっとハッキリ知らしてやる、―――もうそれに越したことはないのであった。