一体、彼女は庄造が思っているほど猫好きではないのだが、庄造の気持を迎えるためと、品子への面当てと、両方の必要から自然猫好きになってしまい、自分もそう思えば人にも思わせていたのであって、それは彼女がまだこの家へ乗り込まない時分、蔭で姑のおりんなどとグルになって専ら品子の追い出し策にかかっている間のことだった。
そんな次第で、此処へ来てからもリリーを可愛がってやって、精々猫好きで通していたのだが、だんだん彼女はその一匹の小さい獣の存在を、呪わしく思うようになった。
何でもこの猫は西洋種だと云うことだったが、以前、此処へお客で遊びに来て膝の上などへ乗せてやると、手触りの工合が柔かで、毛なみと云い、顔だちと云い、姿と云い、ちょっとこの辺には見当らない綺麗な雌猫であったから、その時はほんとうに愛らしいと思い、こんなものを邪魔にするとは品子さんと云う人も変っている、やっぱり亭主に嫌われると、猫にまで僻みを持つのか知らんと、面当てでなくそう感じたものだったけれど、今度自分が後釜へ直ってみると、自分は品子と同じ扱いを受ける訳でもなく、大切にされていることは分っていながら、どうも品子を笑えない気持になって来るのが不思議であった。