それでも彼女は、今更猫好きの看板を外して嫌いになり出すキッカケがないのと、「相手はたかが猫だから」と云う己惚れに引き擦られて、腹の虫を押さえて来たのであった。
あの人はリリーを玩具にしているだけなので、ほんとうは私が好きなのである、あの人に取って天にも地にも懸け換えのないのは私なのだから、変な工合に気を廻したら、自分で自分を安っぽくする道理である。
もっと心を大きく持って、何の罪もない動物を憎むことなんか止めにしようと、そう云う風に気を向けかえて、亭主の趣味に歩調を合わせていたのだが、もともと怺え性のない彼女にそんな我慢が長つづきする筈がなく、少しずつ不愉快さが増して来て顔に出かかっていたところへ、降って湧いたのが今度の二杯酢の一件だった。