品子さえおとなしくしていたら、リリーの介在をもう一日も黙視出来なくなった彼女は、早速亭主に談判して品子の方へ引き渡させる積りでいたのに、あんないたずらをされてみると、素直に註文を聴いてやるのが忌ま忌ましい。
つまり亭主への反感と、品子への反感と、孰方の感情で動いたらよいか板挟みになってしまったのである。
手紙の来たことを亭主に打ち明けて相談すれば、事実はそうでないにも拘わらず品子にケシカケられたような形になるのが心外であるから、それは内証にして置いて、孰方が余計憎らしいかと考えると、品子の遣り方も腹が立つけれども、亭主の仕打ちも堪忍がならない。