もう若い者はセルを着出した頃だのに、袷の上に薄綿の這入ったジンベエを着て、メリヤスの足袋を穿いている彼女は、小柄で、痩せていて、生活力の衰えきった老婆のように見えるけれども、頭の働きは案外確かで、云うことやすることにソツがないので、「息子よりも婆さんの方がしっかりしている」と、近所ではそう云う評判だった。
品子が追い出されたのも、実は彼女が糸を操ったからなので、庄造にはまだ未練があったのだと云う人もある。
それやこれやで、この附近では母親を憎む者が多く、一般の同情は品子の方に集まっていたが、彼女に云わせると、いくら姑の気に入らない嫁でも、忰が好きなものならば、出る筈もないし出せる訳もない、やっぱりあれは庄造に飽かれたからだと云う。