犬なら不思議はないけれども、猫が前の主人を慕って五六里の道を戻って来るとは、あまりイジラシイ話なので、それ以来庄造の可愛がりようは旧に倍したのみならず、おりんも流石に不憫を感じたのか、或は多少薄気味悪く思ったのか、もうそれからは何も云わないようになった。
そして品子が来てからは、福子と同じ理由から、―――と云うのは嫁をいじめるために、却ってリリーの存在が便利を与えることがあるので、やさしい言葉の一つぐらいは時々かけてやっていたのである。
だから庄造は、その母親までが突然福子の味方をし出した様子を見ては、心外でたまらないのであった。