庄造は、彼女が痩せていることは最初から気が付いていたけれど、なおよく見ると、一と月前よりは毛の色つやが悪くなっているばかりでなく、頸の周りだの尾の周りだのが泥だらけになっていて、ところどころに薄の穂などが喰っ着いていた。
貰われて行った八百屋の家も猫好きだと云う話であったから、虐待されていた筈はないので、これは明かに、一匹の猫が尼ヶ崎から此処までひとりで辿って来る道中の難儀を語るものだった。
こんな時刻に此処へ着いたのは、昨夜じゅう歩きつづけたのに違いないけれども、多分一と晩ぐらいではあるまい、もう幾晩も幾晩も、恐らくは数日前に八百屋の家を逃げ出して、方々で道に迷いながら、ようよう此処まで来たのであろう。