そして彼女は今よりもずっと身軽で、食事の時に食物を摘まんで頭の上へ翳してやると、三四尺の高さまで跳び上ったので、すわっていては直ぐ跳び着かれてしまうから、しばしば食事の最中に立ち上らねばならなかった。
彼はその時分からあの曲芸を仕込んだのであるが、箸の先に摘まんだ物を、三尺、四尺、五尺、と云う風に、跳び着く毎にだんだん高くして行くと、しまいには着物の膝へ跳び着いて、胸から肩へすばしッこく這い上って、鼠が梁を渡るように、箸の先まで腕を渡って行ったりした。
或る時などは店のカーテンに跳び着いて、天井の方までクルクルと這い上って、端から端へ渡って行って、又カーテンに掴まって降りて来る、―――そんな動作を水車のように繰り返した。