就中そのぱっちりした大きな眼球は、いつも生き生きとよく動いて、甘える時、いたずらをする時、物に狙いを付ける時、どんな時でも愛くるしさを失わなかったが、一番可笑しいのは怒る時で、小さい体をしている癖に、やはり猫なみに背を円くして毛を逆立て、尻尾をピンと跳ね上げながら、脚を蹈ん張ってぐっと睨まえる恰好と云ったら、子供が大人の真似をしているようで、誰でもほほ笑んでしまうのであった。
庄造は又、リリーが始めてお産をした時の、あの訴えるようなやさしい眼差を、忘れることが出来ないのであった。
それは蘆屋へ連れて来てから半年ほど過ぎた時分であったが、或る日の朝、産気づいた彼女はしきりにニャアニャア云いながら彼の後を追って歩くので、サイダの空き函へ古い座布団を敷いたのを押入の奥の方に据えて、そこへ抱いて行ってやると、暫くの間は函に這入っているけれども、直きに襖を開けて出て来て、又啼きながら追いかける。