だがあの朝、トタン屋根の上で啼いていたのをやっと掴まえて、頬ずりをしながら抱き締めた瞬間に、ああ、不憫なことをした、己は残酷な主人だった、もうどんなことがあっても誰にもやるものか、死ぬまで此処に置いてやるのだと、心に誓ったばかりでなく、リリーとも堅い約束をした気持だった。
それを今度、又あんな風にして追い出してしまったかと思うと、非常に薄情な、むごいことをしたと云う感じが胸に迫って来るのであった。
その上可哀そうなのは、この二三年めっきり歳を取り出して、体のこなしや、眼の表情や、毛の色つやなどに、老衰のさまがありありと見えていたのである。