ただ庄造に甘えかかったり、退屈そうな顔をして日向ぼっこなどをしている時に、その眼が深い憂いに充ちて、涙さえ浮かめているかのように、潤いを帯びて来ることがあった。
尤もそれも、その時分にはなまめかしさの感じの方が強かったのだが、年を取るに従って、ぱっちりしていた瞳も曇り、眼のふちには眼脂が溜って、見るもトゲトゲしい、露わな哀傷を示すようになったのである。
で、これは事に依ると、彼女の本来の眼つきではなくて、その生い立ちや環境の空気が感化を与えたのかも知れない、人間だって苦労をすると顔や性質が変るのだから、猫でもそのくらいなことがないとは云えぬ、―――と、そう考えると、尚更庄造はリリーに済まない気がするのである。