夜は夫の寝床を敷いて、帰るかどうか分らない人を待ち侘びていると、その寝床の上へ遠慮会釈もなく乗って来て、のうのうと脚を伸ばす憎らしさに、寝かけたところを叩き起して追い立ててやる。
そんな工合に、随分この猫には当り散らしたものだけれども、再びこうして一緒に暮すようになったのは、やっぱり因縁と云うのであろう。
品子は自分が蘆屋の家を追い出されて来て、始めてこの二階に落ち着いた時にも、あの北側の窓から山の方を眺めながら、夫恋いしさの思いに駈られたことがあるので、今のリリーがああして外を見ている心持もぼんやり分るような気がして、ふと眼頭が熱くなって来るのであった。