品子は自分が蘆屋の家を追い出されて来て、始めてこの二階に落ち着いた時にも、あの北側の窓から山の方を眺めながら、夫恋いしさの思いに駈られたことがあるので、今のリリーがああして外を見ている心持もぼんやり分るような気がして、ふと眼頭が熱くなって来るのであった。
「リリーや、さ、此方へ来て、これ食べなさい。
やがて彼女は、押入の襖を開けて、かねて用意をしておいたものを取り出しながら云うのであった。
品子は自分が蘆屋の家を追い出されて来て、始めてこの二階に落ち着いた時にも、あの北側の窓から山の方を眺めながら、夫恋いしさの思いに駈られたことがあるので、今のリリーがああして外を見ている心持もぼんやり分るような気がして、ふと眼頭が熱くなって来るのであった。
「リリーや、さ、此方へ来て、これ食べなさい。
やがて彼女は、押入の襖を開けて、かねて用意をしておいたものを取り出しながら云うのであった。