「リリーや、さ、此方へ来て、これ食べなさい。
やがて彼女は、押入の襖を開けて、かねて用意をしておいたものを取り出しながら云うのであった。
彼女は昨日塚本の端書を受け取ったので、いよいよ此処へ連れて来られる珍客を欵待するために、今朝はいつもより早起きをして、牧場から牛乳を買って来るやら、皿やお椀を揃えておくやら、―――この珍客にはフンシが必要だと気が付いて、昨夜慌てて炮烙を買いに行ったのはいいが、砂がないのには困ってしまって、五六丁先の普請場から、コンクリートに使う砂を闇にまぎれて盗んで来るやらして、そんなものまで押入の中にこっそり忍ばせて置いたのである。