彼女は「チョッ」と舌打ちをして、今も部屋のまん中に空しく置かれてある御馳走のお皿と、砂が少しも濡れていない綺麗なフンシとを恨めしそうに睨みながら、針箱の傍にすわる。
かと思うと、ああ、そうだった、あんまり長く縛っておいては可哀そうだと、又立ち上って、解きに行って、ついでに撫でてみたり、抱いてみたり、駄目と知りながらも食べものをすすめてみたり、フンシの位置を換えてみたり、それを幾度か繰り返すうちに日が暮れて来て、夕方の六時頃になると、階下から初子が晩の御飯を知らせるので、又紐を持って立ち上る。
そんな風にして、その日は一日猫のことにかまけて、請け合った仕事も出来ないままに秋の夜長が更けてしまった。