尤もこれがまだ頑是ない仔猫であったら、訳なく懐くのであろうけれども、こう云う老猫になって来ると、人間と同じで、習慣や環境の違った場所へ連れて来られると云うことが、非常な打撃なのかも知れない。
そして遂には、それが原因で死ぬようなことになるのかも知れない。
品子はもともと、腹に一つの目算があって好きでもない猫を引き取ったので、こんなに手数が懸るものとは知らなかったが、云わば以前は敵同士であった獣のお蔭で、夜もおちおち寝られないほど苦労をさせられる因縁を思い合わせると、不思議にも腹が立たないで、猫も可哀そうなら自分も可哀そうだと云う気持が湧いて来るのであった。