品子はもともと、腹に一つの目算があって好きでもない猫を引き取ったので、こんなに手数が懸るものとは知らなかったが、云わば以前は敵同士であった獣のお蔭で、夜もおちおち寝られないほど苦労をさせられる因縁を思い合わせると、不思議にも腹が立たないで、猫も可哀そうなら自分も可哀そうだと云う気持が湧いて来るのであった。
考えてみれば、自分だって蘆屋の家を出て来た当座は、此処の二階にひとりでしょんぼりしていることがこの上もなく悲しくって、妹夫婦が見ていない時は、毎日毎晩泣いてばかりいたではないか。
自分だって、二日三日は何をする元気もなく、ろくろく物も食べなかったではないか。