そしてときどき、五分か十分ぐらいの間、試しに独り放っておいて、部屋を留守にしてみると、まだ剛情にちぢこまってはいるけれども、いい塩梅に逃げ出しそうな風も見えない。
それで俄かに気を許したことが悪かったのだが、お午の御飯に、今日はゆっくり食べようと思って、三十分ほど階下へ降りている時だった、二階で何か、ガサッと云う音がしたようなので、急いで上って来てみると、襖が五寸ほど開いている。
多分リリーは、そこから廊下へ出て、南側の、六畳の間を通り抜けて、折悪く開け放しになっていたそこの窓から屋根へ飛び出したのであろう、もうその辺には影も形も見えなかった。