それにつけても、リリーは今頃何処にいるか、蘆屋へ帰っているならいいが、もしそうでもなく、路に迷っているなら、こんな晩にはさぞ雨に濡れているであろう。
実を云うと、まだ塚本には逃げられたことを知らせてやらないのであるが、あれから此方、ずっとそのことが頭に引っかかっているのであった。
彼女としては早く知らしてやった方が行き届いていることは分っていたのだが、「憚りながら、とうに戻って来ておりますから御安心下すって結構です、いろいろお手数をかけましたが、もう御入用はありますまいな」と、皮肉交りに云われそうなのが業腹で、つい延び延びにしていたのである。