自分を可愛がってくれる人と、内心嫌っている人とをよく知っていて、庄造が呼べば答えるけれども、品子が呼ぶと知らん顔をしていたものだのに、今夜は幾度でも億劫がらずに答えるばかりでなく、次第に媚びを含んだような、何とも云えない優しい声を出すのである。
そして、あの青く光る瞳を挙げて、体に波を打たせながら手すりの下まで寄って来ては、又すうっと向うへ行くのである。
大方猫にしてみれば、自分が無愛想にしていた人に、今日から可愛がって貰おうと思って、いくらか今迄の無礼を詫びる心持も籠めて、あんな声を出しているのであろう。