それから、全く思いがけないことには、寝床の上にすわっている品子の方へ一直線に歩いて来て、その膝に前脚をかけた。
これはまあ一体どうしたことか、―――彼女が呆れているうちに、リリーはあの、哀愁に充ちた眼差でじっと彼女を見上げながら、もう胸のあたりへ靠れかかって来て、綿フランネルの寝間着の襟へ、額をぐいぐいと押し付けるので、此方からも頬ずりをしてやると、頤だの、耳だの、口の周りだの、鼻の頭だのを、やたらに舐め廻すのであった。
そう云えば、猫は二人きりになると接吻をしたり、顔をすり寄せたり、全く人間と同じような仕方で愛情を示すものだと聞いていたのは、これだったのか、いつも人の見ていない所で夫がこっそりリリーを相手に楽しんでいたのは、これをされていたのだったか。